ガンやカモなど離巣性の鳥類は≪野鳥・環境・本≫

孵化した直後に初めて出会った動く物体に追従する。

このような現象を「刷り込み」とよんでいる。

通常、自然環境下では、孵化したばかりの雛にとって刷り込みの対象となるのは母親であり、正常な刷り込みによって正しい親子のきずなができ、親の保護や世話を受け、自らの生存を守ることになる。

イギリスの動物学者スパルディングが初めてこの行動を実験的に研究し、ドイツの動物学者ハインロートは、孵卵器でかえったハイイロガンの雛が人間に追従し、仲間のガンとはいっしょに生活できなくなることを発見した。

彼の弟子であるオーストリアの動物学者ローレンツは、初めてこの行動を刷り込みPrgungと名づけ、詳しい研究を発表した。

ローレンツは、刷り込みが通常の学習と次の点で区別できると考えた。

1、臨界期が存在し、生活史の特定の時期にだけ成立する。

2、無報酬性で、賞とか罰を必要としない。

3、不可逆性で、消去や転移が困難である。

4、行動後続発現性で、生涯保持され、生得的なサイン刺激と変わらない。

たとえば、人間を刷り込んで成熟したガンは人間に求愛する。

5、超個体性で、個体の特徴ではなく種の特徴が刷り込まれる。

人間を刷り込んだガンは、すべての人間に対して特有の行動を示す。

ローレンツは、接近と追従という本能行動を解発するサイン刺激と、生得的解発機構の結び付きによって刷り込みが生ずると考えた。

その後、刷り込まれる刺激は生得的に備わっているのではなく、ある時期に習得し、経験によって変容する特殊な学習であると考える学者が現れ、刷り込みの研究が盛んになった。

ヘスは、カモの雛が孵化後13~16時間の敏感期に刷り込みの成立しやすいことをみいだした。

今日では、刷り込みは種の生存に特別重要な行動に認められる特殊な学習で、行動は生得的であるが、解発する対象は経験によって習得されるという考えに落ち着いている。
update:2010年02月05日